【桜花賞】最多勝も近年苦戦のチューリップ賞組、馬連の最高配当は19万6630円 牝馬三冠初戦を「記録」で振り返る
緒方きしん

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チューリップ賞組は2016年ジュエラーが最後
今週は牝馬クラシック第一戦、桜花賞が開催される。キョウエイマーチにファレノプシス、テイエムオーシャンにダンスインザムード、ラインクラフトと、その時代を代表する名牝たちが勝利してきた一戦。牝馬三冠を目指す名牝が今年も美しく火花を散らす。今回は桜花賞の1986年以降の記録を振り返る。
今年は2歳女王アルマヴェローチェが阪神JFから直行。ライバルにもフェアリーSから直行するエリカエクスプレスやクイーンCを制したエンブロイダリーなど様々な路線から実力派が集結する。
アネモネS勝ち馬トワイライトシティやエルフィンS勝ち馬ヴーレヴー、きさらぎ賞2着のリンクスティップなども面白い存在だ。そんな桜花賞だが、勝ち馬の前走がどのレースだったかをランキングにすると以下の通りとなる。
1位 19頭 チューリップ賞
2位 6頭 フィリーズレビュー(四歳牝馬特別を含む)
3位タイ 3頭 阪神JF、アネモネS
5位タイ 2頭 フラワーC、エルフィンS
1位のチューリップ賞は長年にわたり桜花賞の超有力どころが集結する一戦。2012年〜2016年にはジェンティルドンナ、アユサン、ハープスター、レッツゴードンキ、ジュエラーと5年連続でチューリップ賞から桜花賞馬が誕生している。
しかし2017年にレーヌミノルが2008年レジネッタ以来となるフィリーズレビューからの桜花賞制覇を達成すると、翌年はシンザン記念から直行のアーモンドアイが勝利。2019年には朝日杯FSから直行したグランアレグリアが勝利をあげるなど、8年連続でチューリップ賞組が敗北を喫している。
実力を兼ね備えた白毛のアイドル、ソダシ
2011年〜2017年の7年間と2018年〜2024年の7年間の桜花賞勝ち馬の「レース間隔」を比較すると、前者が中37.85日で後者が中96.14日と歴然の差がある。
その理由のひとつとなるのが、ここ4年で3勝をあげている阪神JF直行馬の躍進である。その皮切りとなったのが、2021年の勝ち馬ソダシ。無敗で桜花賞を制覇し、白毛馬として数えきれないほどの記録を樹立した。
2020年の阪神JFは非常にハイレベルなメンバーとなった。1、2着のソダシとサトノレイナスはそのまま桜花賞でも1、2着をキープ。3着だったユーバーレーベンはフラワーC、フローラSを経由してオークスを勝利した。
4着のメイケイエールはチューリップ賞を勝利したものの桜花賞では18着と惨敗し、その後はスプリント路線で活躍。5着ヨカヨカ、7着ジェラルディーナもそれぞれの路線で活躍している。
牝馬最強世代のひとつ、ウオッカ&ダイワスカーレット世代
前哨戦としてメンバーレベルが高かったといえば、ウオッカとダイワスカーレットが激突した2007年のチューリップ賞もあげられる。こちらはチューリップ賞では1着ウオッカ、2着ダイワスカーレットだったが桜花賞では1着ダイワスカーレット、2着ウオッカと逆転した。
さらに同年のチューリップ賞で5着だったローブデコルテは2頭が不在となったオークスを制覇。3着のレインダンスは秋華賞で1着ダイワスカーレット、3着ウオッカの間に食い込む2着と健闘した。
この世代の牝馬はアストンマーチャンやピンクカメオ、ベッラレイアやカノヤザクラなどタレントぞろいで牝馬最強世代のひとつに数えられる。それでもウオッカ、ダイワスカーレットの2頭は強烈で、この2頭は古馬となった2008年の天皇賞(秋)でもワンツー決着を見せている。
ブエナビスタとレッドディザイア、ジェンティルドンナとヴィルシーナのように牝馬三冠をめぐる魅力的なライバル関係は多いが、その中でも一段と印象深い2頭といえるのではないだろうか。
19万円馬券が飛び出した2008年桜花賞
ダイワスカーレットとウオッカで決着した桜花賞は、馬連配当が2.7倍と桜花賞史上における最低配当となっている。馬連の低配当ランキングでは、2014年のハープスターとレッドリヴェールが馬連3.7倍、2018年のアーモンドアイとラッキーライラックが4.8倍で続く。逆に馬連の高配当ランキングは以下の通り。
1位 1966.3倍 レジネッタ、エフティマイア(2008年)
2位 344.4倍 アローキャリー、ブルーリッジリバー(2002年)
3位 181.4倍 オグリローマン、ツィンクルブライド(1994年)
4位 170倍 レーヌミノル、リスグラシュー(2017年)
5位 142.3倍 ファイトガリバー、イブキパーシヴ(1996年)
レジネッタとエフティマイアの組み合わせは馬単、ワイドでも最高配当であり、同年の三連単、三連複も桜花賞史上における最高配当となっている。
敗れた人気馬サイドも後に実力を発揮
最大の波乱となった2008年の1番人気馬はトールポピー。前年の阪神JFで強い勝ち方を見せ、前哨戦のチューリップ賞でも2着と順調な仕上がりを見せていた。桜花賞では8着と大きく負けたが、次走のオークスでは勝利をあげ、その実力を見せつけた。
孫のシャーレイポピーは牝馬クラシックへの出走こそ叶わなかったが、2021年チューリップ賞でメイケイエールの5着と善戦している。2番人気のリトルアマポーラは5着に敗北。同馬はオークスで7着、秋華賞で6着と続けて馬券圏外に敗れたが、続くエリザベス女王杯で勝利をあげ、GⅠ馬の仲間入りを果たしている。
勝利したレジネッタは12番人気だった。デビュー3戦目も8番人気で勝利しているように激走タイプの牝馬であったとも言えるが、オークスで3着、古馬となってからも重賞を制しているように実力も兼ね備えていたことは間違いない。
引退後にも活躍馬を安定して輩出しており、モーリスとの仔であるプレフェリータは中央で3勝。その3勝は5番人気、7番人気、15番人気でのものであり、激走の特性を色濃く受け継いでいるといえる。
2着のエフティマイアは15番人気での好走。こちらはデビューから3連勝で新潟2歳Sを制した実績馬だったが、京王杯2歳Sで13着に敗れると、それ以降、17着→5着→6着→6着と馬券圏外に敗れていた。
そのため桜花賞では完全に伏兵評価とされていたが、6番手から粘り強い競馬を見せて2着となると、次走のオークスでも13番人気2着と好走。秋華賞でも5着となるなど実力を見せたほか、引退後には繁殖牝馬として様々な種牡馬との間に仔を産んでいる。2024年にはオメガパフューム産駒の牝馬が誕生し、今からデビューが待ち遠しい。
今年は直行組、ステップレース組がそれぞれどのような走りを見せるのか。そして、2008年のような大波乱が巻き起こるのかにも注目が集まる。
《ライタープロフィール》
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、ダイワスカーレット、ドウデュース。
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