【フェアリーS回顧】時計も内容も優秀、エリカエクスプレスに高まる期待 対照的に2、3着馬は取り扱い注意

勝木淳

2025年フェアリーSレース結果,ⒸSPAIA

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無敗エリカエクスプレスへの期待

2025年1月12日に中山競馬場で開催されたフェアリーSは、“1戦1勝”だったエリカエクスプレスがキャリア2戦目で重賞タイトルを手にした。

今年も除外馬9頭の狭き門となったフェアリーS。オープン級はジャルディニエ、ミーントゥビー、ニシノラヴァンダの3頭。残り13頭は1勝馬であり、例年と同じくメンバー的には“ほぼ1勝クラス”。ところが、勝ち時計1:32.8は現在の条件となった2009年以降の最速であり、エリカエクスプレスが2着ティラトーレにつけた着差0.5秒は最大着差だった。

もちろん、決着時計は馬場状態の影響を受ける。暮れから速い決着が続く中山だけに過大評価はできない。だが、前日2勝クラス1:33.2、翌日ニューイヤーS(L)でも1:32.3だから、上々の時計といっていい。

加えて内容も濃い。序盤600m34.1、前半800m45.5、後半800m47.3、ラスト600m35.5で落差1.8のハイペース。このレースがハイペースだったのは過去4回あり、最速はダンスファンタジアが勝った2011年の1:33.7。このときはラスト200mで12.5と時計を要し、ハイペースらしいバテ比べになった。

だが、今年の後半600mは11.8-11.7-12.0。一旦加速し、最後もバテたというほど落ち込まなかった。前半12.4-10.6-11.1で入り、ライバルと接触して引っ掛かりそうになるなど、好位にいたエリカエクスプレスにとって消耗しておかしくない状況にあった。

これを先行し、ゴールまで大きくバテずに運んだということは、スピードと持続力、加えて高いマイル適性の証明といえよう。3馬身差も納得であり、無敗という事実も含め、決して軽くは扱えない。


日本でも開花した欧州スピード血脈

それにしても、血統をみると父エピファネイアに母系は欧州色が濃く、ガリレオの名もあり、マイルのスピード血統とは思えない。

だが、母系にはアナバーの名がある。現役時代はモーリスドゲスト賞やジュライCを勝った欧州トップスプリンターであり、2007~08年のフランスリーディングサイアー。産駒にはブリーダーズCマイル3連覇のゴルディコヴァがいる。

アナバーは母の父としても優秀で、凱旋門賞連覇のトレヴやドイツダービー馬パラディウムを送った。日本だと、エリザベス女王杯を勝ったクイーンズリングの母の父でもある。この欧州スピード血脈がエリカエクスプレスのマイル適性を支えている。決して単調で、これっきりとは思えない。折り合いさえつけば、中距離でも楽しめるだろう。

父エピファネイアは牡馬だと少しのんびり成長していく傾向にあるが、牝馬はデアリングタクトやステレンボッシュなど、能力の基礎値さえ高ければ、着実にクラシックに乗ってくる。

エリカエクスプレスも2連勝でクラシック出走権を手にした。ここから桜花賞まで成長を促すもよし、地元のトライアルを使うのもよし。選択肢が広がったことで、馬に合った道を歩めるのは大きなアドバンテージだ。


最後は止まっていたティラトーレ

2着ティラトーレもハイペースを凌いだという意味では価値はある。だが、エリカエクスプレスとは3馬身。3着とはクビ差であり、明らかに最後はバテていた。

それでも残したのは価値がある、と言いたいが、このレースを根拠に人気に推されそうでちょっと怖い。3歳1月の牝馬にとって全体的にペースが厳しすぎたため、流れたとはいえみんなキツく、最後に脚を使える馬が少なかったから残れたともいえる。

これほど速くならず、普通に流れた場合、はたして後ろの末脚を凌げるかどうか。前走も1:33.0を記録しており、この2戦で能力は示したため、杞憂に終わる可能性は残るものの、過剰人気なら疑ってもいい。

3着は最後に追い込んだエストゥペンダ。流れが向いたのは確かで、ティラトーレが止まったのも末脚を目立たせた一因。今後も後ろから脚を溜めて終いに賭ける形だと危なっかしい。

1勝クラスにメドは立てたものの、こちらもティラトーレと同じく次走人気に推されるなら、取り扱いには気をつけたい。


2025年フェアリーSレース回顧,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『アイドルホース列伝 超 1949-2024』(星海社新書)に寄稿。

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