【小倉牝馬S】愛知杯を引き継ぐ新設重賞 悩ましいクイーンズウォークの取捨、重賞2勝馬の復活はあるか

勝木淳

過去9年の愛知杯のデータから見る小倉牝馬S,ⒸSPAIA

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小倉の愛知杯はハイペースの乱戦だったが

重賞スケジュール改編によって生まれた小倉牝馬Sは愛知杯の距離、負担重量(ハンデ)を引き継ぎ、小倉で行われる。なお、愛知杯は3月に移り、2月に行われていた京都牝馬Sの条件を受け継ぐ。

第1回とはいえ、愛知杯のかわり。ひとまずデータは旧愛知杯を使用し、その傾向が小倉にかわってどうなるか試すしかない。

そもそも愛知杯は中京が冬の京都を代替する影響で、2020年と2024年は小倉で行われた。小倉開催の2回は9番人気デンコウアンジュ、1番人気ミッキーゴージャスが勝利している。

特徴は小回りらしい乱戦で、20年は重馬場で前後半1000m60.1-61.0、24年は良馬場で前後半1000m57.4-60.5の前傾ラップ。後半はラップが上昇せず、バテ比べになり、脚力を問う競馬になった。

中京では急坂を意識する分スローが多かったが、舞台を小倉に移し、激しい戦いになりそうだ。データは2016年からの旧愛知杯9年分を使用し、ローテーション中心に探っていく。


人気別成績,ⒸSPAIA


1番人気【3-1-1-4】(勝率33.3%、複勝率55.6%)はまずまずも、2番人気【1-0-2-6】(勝率11.1%、複勝率33.3%)以下は一気に混戦模様。7~9番人気4勝で、複勝率だと6~8番人気(37.0%)が上位人気と互角以上だ。

6~9番人気は4歳【0-0-0-7】、5歳【3-2-2-8】、6歳【1-1-1-9】と激走するのは5歳以上。特に5歳の成績がいい。穴を狙うなら5歳と覚えよう。


年齢別成績,ⒸSPAIA


一方で、年齢別全体では4歳が【3-2-2-24】勝率9.7%、複勝率22.6%とリードする。4番人気以内【3-2-2-7】で5番人気以下好走なし。人気の4歳には逆らえない。

5歳も【4-4-4-42】勝率7.4%、複勝率22.2%と悪くなく、馬券の組み合わせとしては人気の4歳と穴の5歳が最適だ。6歳も【1-3-2-41】勝率2.1%、複勝率12.8%で決して軽くは扱えない。


大敗が気になるクイーンズウォーク

4歳の人気どころとなるとクイーンズウォークだろう。秋華賞は大敗を喫したが、ローズSなど重賞2勝。GⅠでは成績を残していないものの、間隔が詰まるとよくないため、重賞→GⅠでパフォーマンスを下げるようだ。ならば、間隔をあけたここは当然狙いだろう。


前走クラス別成績,ⒸSPAIA


クイーンズウォークも該当する前走GⅠは【3-2-3-27】勝率8.6%、複勝率22.9%ながら秋華賞は【2-0-0-9】と極端。5着以内【2-0-0-1】、6着以下【0-0-0-8】で素直に好走後を買えばいい。

となると、15着に敗れたクイーンズウォークはデータ上、歓迎とはいえない。悩ましい。


前走エリザベス女王杯・着順別成績,ⒸSPAIA


ちなみに、前走エリザベス女王杯は【1-2-2-18】勝率4.3%、複勝率21.7%と安易に飛びつけない。買うなら前走5着【0-1-0-2】(複勝率33.3%)以下に敗れた組だ。

6~9着【0-1-1-3】(複勝率40.0%)や10着以下【1-0-1-10】(勝率8.3%、複勝率16.7%)と敗退後がいいのでややこしい。ゴールドエクリプス、コスタボニータなど今年も大敗馬が多い。


前走GⅢ・レース別成績,ⒸSPAIA


前走GⅢ【3-2-1-26】(勝率9.4%、複勝率18.8%)はターコイズS【2-1-0-7】(勝率20.0%、複勝率30.0%)でマイルと2000mでイメージは異なるものの、直近の牝馬限定重賞だからなのか、つながる。

牡馬相手の中日新聞杯【0-1-1-8】(複勝率20.0%)や福島記念【0-0-0-6】、チャレンジC【0-0-0-4】と比べてつながりが薄そうながら、実際は逆だから注意だ。福島記念2着フェアエールングは人気なら嫌いたいほど。

となるとターコイズS12着セントカメリアに注目したいところだが、10着以下から巻き返した例はない。

ハンデ戦からハンデ戦なので、斤量を比べると増減なし【2-0-0-4】、斤量減【0-1-0-1】、斤量増【0-0-0-2】で据え置きか斤量減なら買い材料になる。セントカメリアの前走は53kg。マーメイドSも53kgで、昨年の愛知杯は54kg。増えることはなさそう。

シルクレーシングの6歳牝馬なので、これが引退レースの可能性もある。最後にその力を発揮するだろうか。取捨に悩む。


過去9年の愛知杯のデータから見る小倉牝馬S,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『アイドルホース列伝 超 1949-2024』(星海社新書)に寄稿。

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