【AJCC】スタミナや底力が必要な舞台 ボルドグフーシュは血統からメンバー中屈指の舞台適性

坂上明大

2025年アメリカジョッキークラブカップの注目血統,ⒸSPAIA

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傾向解説

中山芝2200m(外)を舞台に行われるAJCC(アメリカジョッキークラブカップ)。特殊なコースレイアウトで施行されるため、中山芝2200m巧者には要注意の一戦です。

同コースで行われる重賞競走はセントライト記念、AJCC、オールカマーの3レース。古馬重賞の2つはともに別定戦のためリピーターが走りやすく、素直にコース実績を信頼していい舞台といえるでしょう。

◆中山芝2200m重賞(AJCCを含む)の複数回好走馬の例
ミトラ:2015年AJCC2着、2015年オールカマー3着
ゼーヴィント:2016年セントライト記念2着、2017年AJCC2着
タンタアレグリア:2017年AJCC1着、2017年オールカマー3着
ミッキースワロー:2017年セントライト記念1着、2018年AJCC2着、2019年オールカマー2着
ダンビュライト:2018年AJCC1着、2018年オールカマー3着
ステイフーリッシュ:2020年AJCC2着、2020年オールカマー3着
ラストドラフト:2020年AJCC3着、2021年AJCC3着
ボッケリーニ:2022年AJCC3着、2024年AJCC2着

血統面での注目はSadler's Wells。もともと後半の持続力勝負になりやすいコースですが、AJCCは連続開催の最終日にあることから、よりスタミナや底力が必要な舞台となっています。そこで強さを発揮するのが欧州で最大勢力を築く同馬の血。過去10年で5頭の勝ち馬を輩出するなど圧倒的な実績を残しています。

また、同様の理由からRobertoも注目血統のひとつ。元来、Sadler's WellsとRobertoは好走条件が似ており、AJCCにおいても両馬の馬力やスタミナは大きなアドバンテージとなっています。

特に、Roberto系ではシンボリクリスエス→エピファネイアなどが出るKris S.系よりもブライアンズタイムやSilver Hawk、リアルシャダイなどのスタミナ系統の方が強さを発揮するため、Roberto系の分類にも注目してみるといいでしょう。

日本の最大勢力であるサンデーサイレンス系ではステイゴールドに注目。こちらも、このレースに限らずSadler's WellsやRobertoとは好走条件が似ているため、2016年7番人気3着のショウナンバッハ(父ステイゴールド)や2022年11番人気2着のマイネルファンロン(父ステイゴールド)など複数の穴馬が好走しています。

ちなみに昨年は不良馬場での開催でしたが、Roberto内包馬であるチャックネイト、ボッケリーニが1、2着、Nureyev(≒Sadler's Wells)の5×4を持つクロミナンスが3着と、血統傾向通りの決着となりました。

血統別成績,ⒸSPAIA


<血統別成績(過去10年)>
Sadler's Wells内包馬【5-2-1-21】
勝率17.2%/連対率24.1%/複勝率27.6%/単回収率248%/複回収率90%
Roberto内包馬【4-6-4-39】
勝率7.5%/連対率18.9%/複勝率26.4%/単回収率38%/複回収率119%
ステイゴールド内包馬【0-3-4-17】
勝率0.0%/連対率12.5%/複勝率29.2%/単回収率0%/複回収率158%

有力馬の血統を解説

ダノンデサイル
母トップデサイルは2014年BCジュベナイルフィリーズ2着馬で、エピファネイア産駒の本馬はRobertoの4×5、Seattle Slewの5×4などバランスの取れた配合形。距離適性やペース適性の幅も広く、コースの得手不得手もありません。

ただ、脚をタメられた時の爆発力は素晴らしい反面、父の産駒らしい気性の危うさが課題。エピファネイア産駒の乗り替わり成績は悪く、デビューから乗り続けてきた横山典弘騎手からの乗り替わりがどうでしょうか。

レーベンスティール
リアルスティール×トウカイテイオーらしいスレンダーな体つきですが、母母父リアルシャダイから受け継ぐ馬力も兼備。体ができてきた現在は弱点の少ない中距離馬に仕上がってきており、セントライト記念とオールカマーを制している中山芝2200mは特に得意とするコースのひとつです。

ボルドグフーシュ
4代母Belgaから繋がる牝系にはイクイノックスなどがおり、母ボルドグザグはイクイノックスの母シャトーブランシュと共通点が多い配合形(Halo、Nureyev、Buckpasser、Lyphard、Belgaなどが共通)です。

本馬はRoberto系スクリーンヒーロー産駒らしい立ち肩が特徴的で、馬力と機動力が魅力な芝中長距離馬です。中山芝2200mの経験はありませんが、血統面から見る舞台適性はメンバー中屈指の一頭ではないでしょうか。

2025年AJCCの有力馬と評価,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。2023年11月には本島修司氏との共同執筆で『競馬の最高戦略書 予想生産性を上げる人の取捨選択の技術』(主婦の友社)を出版。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。

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