【中山牝馬S】1番人気10連敗中の超難解ハンデ重賞 好データに合致、注目は上がり馬シランケド

勝木淳

過去10年のデータから見る中山牝馬S,ⒸSPAIA

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1番人気10連敗中

春は牝馬の別れの季節。繁殖を控えるギリギリのタイミングに位置する中山牝馬Sは引退レースという側面をもつ。クラブ所属の6歳牝馬は引退が決まっており、昨年もククナが引退レースで2着と好走した。この引退レースの馬券的な扱いが非常に難しい。ククナは中山金杯に続き2着と意地をみせたが、みんなが好調のままターフを去るわけではない。たとえ実績馬であっても、引退レースで再上昇するとは限らない。

仕上げる側もさじ加減というものがある。びしっと仕上げ、重賞タイトルを取りに行くのは、ケガのリスクと表裏一体。まずは無事に引退させることが優先される。かといって仕上げないまま、実戦に挑むのも危険がついてくる。鍛えすぎてもいけないし、手控えるのも危ない。だから牝馬の引退レースは難しい。思い切って軽視するのも手だが、ククナの例もある。

こういった事情にハンデ戦や中山芝1800mという舞台設定も絡み、中山牝馬Sは毎年、馬券を買う側を悩ませる。ここからは過去10年分のデータを使用して、当レースを分析していく。

人気別成績,ⒸSPAIA


人気別では、1番人気が【0-2-2-6】複勝率40.0%と未勝利。2014年フーラブライドの勝利から10年、勝っていない。3番人気【2-1-0-7】勝率20.0%、複勝率30.0%や、5番人気【3-1-2-4】勝率30.0%、複勝率60.0%が目立ち、7番人気以内9勝と好走候補は非常に多い。

5番人気がもっとも好走確率が高く、これだけで難しいレースだが、10番人気以下【1-2-2-57】勝率1.6%、複勝率8.1%の飛び込みもある。絞って買うレースではない。

年齢別成績,ⒸSPAIA


年齢では4歳【4-3-2-30】勝率10.3%、複勝率23.1%、5歳【5-4-4-42】勝率9.1%、複勝率23.6%が一歩リード。なんやかんや主力世代が強い。穴は5歳で7番人気以下【2-2-2-31】からよく出る。

ベテランなら7歳以上【0-0-3-9】複勝率25.0%に注目。馬券に絡んだ3頭は5、15、5番人気。16年3着メイショウスザンナは直近3戦で連続二けた着順も、4走前にクイーンS勝利しており、このレースまでオープンの芝1800mでは【1-0-1-1】。崩れたのは東京コースだけで、コーナー4回の1800m戦の適性が高かった。

ゲートが五分ならシランケド

小倉牝馬Sを勝ったシンティレーションはシルクレーシングの6歳。ここが最後だろう。ほかにもターコイズS2着ビヨンドザヴァレー、中山金杯4着クリスマスパレードなど多士済々。ハンデ含め、今年もちょっとした要素が勝敗をわけそうだ。

前走クラス別成績,ⒸSPAIA
前走GⅢ・馬体重別成績,ⒸSPAIA


前走GⅠ、GⅡあわせて【0-2-1-16】とここでは格があまり意味をなさない。前走GⅢが【6-5-8-72】勝率6.6%、複勝率20.9%と質、量ともにリード。ここの取捨がカギになる。

GⅢ組の目安としては、前走からの馬体重の推移をあげる。増減なし【2-1-2-9】勝率14.3%、複勝率35.7%、馬体増【3-2-3-25】勝率9.1%、複勝率24.2%の2組が、馬体減【1-2-3-38】勝率2.3%、複勝率13.6%をしのぐ。体が増えている、もしくはキープしている馬が好走する。

春になり、気候も暖かくなり、人間でも気が早い人は汗ばむ季節だが、馬もまたしかり。寒暖差のコントロールが難しく、体調が整わないケースもある。

レース別では、愛知杯が【4-1-4-34】勝率9.3%、複勝率20.9%。だが、同レースが引き継がれた小倉牝馬S組にこのデータを当てはめていいのか迷う。競馬場が変わり、時期だけが同じレースの扱いは難しい。

ここではハンデ戦という共通点からアプローチする。前走愛知杯4~9着かつ斤量据え置きは【2-1-1-6】勝率20.0%、複勝率40.0%と良好。小倉牝馬Sで53キロだったエミュー(5着)、54キロだったキミノナハマリア(7着)はハンデに注目だ。

また、前走愛知杯1着馬は【0-0-0-5】で連勝はない。これを小倉牝馬S1着シンティレーションに当てはめていいのか。コース形態の共通点は中京開催だった愛知杯の頃よりも増している。

前走ターコイズS(※GⅢのみ)は【1-1-2-13】勝率5.9%、複勝率23.5%。舞台となる1800mコースは、同じ中山でも外回りマイルとはニュアンスがちょっと違い、内回り特有の器用さが求められる。

前走着順で分けると、ターコイズS4着以内【1-1-2-6】、6着以下(※5着はデータなし)【0-0-0-7】と好走が条件だ。これには同2着ビヨンドザヴァレーが当てはまる。全4勝をマイルであげ、1800mは3歳時の5、2着のみ。小倉芝1800mで好走しており、小回りならこなせるか。

前走条件戦・距離別成績,ⒸSPAIA


前走条件戦組は【2-2-1-11】勝率12.5%、複勝率31.3%と軽視できない。これを距離別で見ると、前走1800m【1-1-1-5】勝率12.5%、複勝率37.5%、1800m超【1-1-0-3】勝率20.0%、複勝率40.0%に対し、1800m未満【0-0-0-3】。上がり馬を狙うなら同距離か距離短縮組だ。

2000mで連勝中のシランケドは注目すべき一頭だろう。中山は紫苑S3着の実績がある。ただし、この馬はゲートが苦手で、後手を踏むケースもある。1コーナーまで距離がないコースだけに、発馬を決め、流れに乗れることが条件になる。

過去10年のデータから見る中山牝馬S,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『オルフェーヴル伝説 世界を驚かせた金色の暴君』(星海社新書)に寄稿。

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