【中山記念】距離延長不安なし!ソウルラッシュを推奨 ボーンディスウェイは「内枠と開幕週」で面白い
山崎エリカ

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Aコース替わり2日目で後方の脚質は不利
過去10年のラップを見ると、かなりのスローペースが2回で、相当なハイペースも2回ある。舞台となる中山芝1800mはスタート後すぐに急坂を上がるため、基本的にペースが上がりにくい。しかしパンサラッサのような何が何でも逃げたいタフな馬が出走していたり、昨年のように降雨の影響で馬場が悪化したりするとハイペースになることがある。
1回中山開催の後半7日間ではCコースを使用していたが、2回中山開催ではAコースから始まる。この影響もあり、過去10年で逃げ、先行が6勝、逃げ~中団では9勝と圧倒的に前が有利となっている。逃げ馬の3着以内は10頭中5回と多く、一方で差し、追い込みの3着以内は少ない。後方の脚質は不利の傾向だ。
能力値1~5位の紹介
【能力値1位 ソウルラッシュ】
昨秋のマイルCSで悲願のGⅠ制覇を達成した馬。マイルCSでは、13番枠からやや出遅れ軽く押して行ったが、いつものように後方から。道中も後方馬群の中目で進めた。3~4角で中団馬群の中目のスペースを拾って進出し、4角でワンテンポ待って出口で馬場の良い外目に出た。
直線序盤で好位列の外からさらに外の進路を取ってしぶとく伸び、先頭列付近へ。ラスト1Fで先頭のウインマーベルを捉えて抜け出し、2馬身半差での完勝だった。
マイルCS当日は「外差し天国」。最後の直線で各馬が外に広がっていくなかで、上手く馬場の良い外に誘導しての勝利だった。前日の10Rまで雨が降り続いた影響もあり、やや時計がかかっていたが、マイルGⅠで2着馬に2馬身半も差をつけたことは高く評価できる。
続く前走の香港マイルではヴォイッジバブルに押し切られたが、2着と崩れずに走れた辺りに、本馬の地力がうかがえる。しかも、前走は10番枠からやや出遅れて、後方からの競馬。ペースも速くなかったことから、せめて4角でもう一列前の位置にいれば、もっと際どい勝負になったと考えられる。
京都芝1600mが舞台のマイルCSは、例年中距離馬が活躍する舞台。2、4着馬も芝1800m戦で活躍した馬たちだった。本馬はマイル戦ではテンに置かれる面があるが、一昨年のマイルCSはラスト1Fで加速し、昨年のマイルCSでもラスト1Fで突き抜けているように、距離の不安は感じない。ドバイに向けての始動戦になる点は減点材料だが、ここでは一枚上の存在。本命候補だ。
【能力値2位 ボッケリーニ】
重賞で3勝、2着8回の実績がある9歳馬。昨年の札幌記念は除外となったが、その前の京都で行われた鳴尾記念では2着と健闘した。ここでは4番枠からまずまずのスタートを切り、促されながらも無理なく中団中目を追走。道中はヨーホーレイクの後ろでスペースを維持して進めた。
3~4角でスペースを詰めて同馬の後ろで我慢し、4角で外へ。そこでニホンピロキーフにフタをされるが、ワンテンポ待って4角出口でさらに外に出た。直線序盤で追われるとすっと3列目に上がり、ラスト1Fでヨーホーレイクとの差を詰めて最後に並びかけるも、アタマ差で届かなかった。
本馬は3走前のAJCCでチャックネイトをマークして進めて、ハナ差の2着、4走前のチャレンジCではベラジオオペラをマークしながらの競馬でハナ差の2着。5走前の京都大賞典でもプラダリアをマークしてクビ差の2着と、一昨年の鳴尾記念以降は勝利していないが、2着がやたらと多い。
今回はどの馬をマークして仕掛けるのか。崩れにくいタイプだが、8ヵ月以上も実戦から遠ざかっている点や、前有利になりやすい開幕週の馬場が不安材料だ。
【能力値3位 アルナシーム】
前走の中山金杯で重賞2勝目を挙げた馬。前走では2番枠から好発を決め、押して主張し、先行争いに加わった。外のクリスマスパレードらが内に切れ込んでくるのを見ると、それらを行かせて中団の最内を追走。道中も中団の最内で我慢して3角へ。
3~4角では中目のスペースを拾って押し上げ、4角で好位の外へ。直線序盤ですっと伸びて2列目に上がり、ラスト1Fでそのまましぶとく抜け出して1馬身1/4差で完勝した。
本馬はあふれる前進気勢が影響して出世が遅れ、その気性からマイル路線で使われた。しかし、タフな馬場で行われた昨夏の中京記念(小倉芝1800m)で初重賞制覇を達成したように、上がりの速い芝マイルよりも上がりのかかる芝1800m~2000mがベストだ。
ただ、前走はレースが緩みなく流れたことで昨夏の中京記念同様に前が崩れる展開だった。差し有利の展開に恵まれて、中京記念に並ぶ自己最高指数を記録。今回は余力の面で不安がある。
くわえて、中山開幕週の今回は前がなかなか止まらず、前走ほど上がりのかかる決着にはならないと見ている。6走前の都大路S以降は1800m以上でも折り合いがスムーズで気性面の危うさを見せていないが、総合的には評価を下げたい。
【能力値4位 リフレーミング】
前走の小倉記念(中京芝2000m)で初重賞制覇を達成した馬。前走は2番枠からまずまずのスタートを切り、様子を見ながら進めていたが、外からテーオーシリウスが内に切れ込みながらハナを主張すると、控えて後方まで下げ切った。道中も後方の最内で前のスペースを維持しながら進めた。
3~4角でディープモンスターの後ろを通って4角出口で外へ。直線序盤で追われると少し内に刺さり、それを立て直して3列目。ラスト1Fではしぶとく伸び、前のコスタボニータを捉えて、クビ差で勝利した。
夏の中京開幕週だった前走は超高速馬場で行われ、激流だった。後方に下げ切ってインコースを上手く立ち回ったことが勝因で、ここでは自己最高指数を記録している。本馬はその後、支持靱帯を傷めて休養しており、今回は6ヵ月半ぶりの一戦。念入りに乗り込まれてはいるが、この中間の追切では迫力がなかった。
また上り坂スタートの前走では良いスタートが切れたが、2走前の七夕賞では出遅れ、4走前の福島民報杯でも出遅れて後方から追走しており、ゲートが悪い点はネック。そのうえで1Fの距離短縮かつ開幕週となると、位置取りが悪くなり、追走に忙しくなることが予想される。ここは相手が強化されることも含め、苦しい戦いになりそうだ。
【能力値5位 グランディア】
2走前の函館記念で2着。2走前は4番枠からまずまずのスタートを切ったが、ややフラついた。そこから立て直してコントロールし、狭い好位の内で我慢して追走。道中でじわっと下げて中団の最内で進めてオニャンコポンの後ろから3角へ。
3~4角でも同馬をマークしていたが、4角で中目に誘導され、5番手から直線へ。直線序盤で追われて3番手に上がり、ラスト1Fでしぶとく伸びて前のアウスヴァールを捉えて、2着を確保した。
本馬は折り合いに課題があり、2走前もややかかる面を見せていたが、上手く最内を立ち回り、4角で上手く中目に進路を切り替えたことで詰まることなく、スムーズに追走できた。
4走前のスピカS(3勝クラス、中山芝1800m)では、ラスト1Fで加速して末脚一閃。後の中山金杯2着馬のマイネルモーントに完勝したように、ここに来て地力をつけているのは確か。
休養明けの前走オクトーバーS(L)では、2走前に自己最高指数を記録したこともあり4着に敗れたが、そこから立て直されての出走となるここは、巻き返す可能性がある。
穴馬は開幕週の内枠で期待高まるボーンディスウェイ
ボーンディスウェイは3走前の東京芝2000m戦、オクトーバーS(L)の覇者。ここでは6番枠からまずまずのスタートを切り、押してハナ争いに加わったが、内外の2頭を行かせて、3番手で様子をうかがう。道中でもペースが緩まなかったので、そのまま3番手外を維持した。
3~4角でペースが落ちると、外からじわっと仕掛けて4角で2番手に上がり、逃げ馬と1馬身1/4差で直線へ。直線序盤で先頭に立ち、ラスト2Fで追われるとしぶとく伸び、ラスト1Fでリードを広げて1馬身3/4差で完勝した。
3走前は超高速馬場かつ逃げ、先行馬が手薄だったこともあって本命にしていたが、前後半5Fが58秒3-59秒1と想定よりもワンランク速いペースのなかでもがんばり抜いた。
ブリンカー着用2戦目の3走前が本格化を感じさせる内容だったこともあり、2走前の中山金杯でも狙ったが、結果は3着。ホウオウビスケッツにプレッシャーをかけられて緩みないペースで逃げるクリスマスパレードらに2列目の外から食らいついていったため、最後に甘さを見せた。それでも先行勢では最先着しており、悪い内容ではない。
前走のAJCCでは7着。前走は時計のかかる馬場にくわえ、コスモキュランダがマクったことで、例年のAJCCらしからぬタフな展開になった。本馬の主な敗因は大外18番枠から好位の外を追走し、向正面でマクったコスモキュランダを追いかけてしまったこと。終始外々を回るロスもあり、崩れても仕方のない内容だった。
今回は近2走よりも逃げ、先行馬が手薄。コスモキュランダのようにマクる馬も不在だ。さらに、開幕週で3番枠と内枠を引けた点も好ましく、好位の内目をロスなく立ち回っての一発に期待したい。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ソウルラッシュの2走前の指数「-25」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.5秒速い
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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