【根岸S】距離短縮組が躍動、「1600m以上」の実績に注目 東京巧者コスタノヴァが狙い目
坂上明大
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傾向解説
東京ダート1400mを舞台に行われる根岸ステークス。別定戦のステップレースのため、スプリントからマイルの実績馬が一堂に会するバラエティー豊かな重賞です。本記事では血統面を中心に、根岸Sのレース傾向を整理していきましょう。
はじめに、根岸Sの舞台となる東京ダ1400mは日本のダートコースのなかでも個性的な特徴を持っています。JRAのダートコースは芝コースの内側にあるため、全体的に小回りで、かつ短い直線という形が基本です。
しかし、東京競馬場のダートコースは直線距離が501.6mもあり、3角~ゴールの距離も900m強という他場よりもかなり広いコースレイアウトとなっている分、後半の持続力が重要な競馬場といえるでしょう。
加えて、より前半のスピードが速い1400m以下のカテゴリーでは東京競馬場の特殊性が際立っており、前走距離別成績では距離短縮組が圧倒的な成績を収めています。前走距離に限らず、1600m以上に実績がある馬、または東京ダ1400mに実績がある馬が狙い目です。
<前走距離別成績>
・距離延長【2-2-0-37】
勝率4.9%/連対率9.8%/複勝率9.8%/単回収率16%/複回収率18%
・同距離【2-4-5-55】
勝率3.0%/連対率9.1%/複勝率16.7%/単回収率21%/複回収率40%
・距離短縮【6-4-5-34】
勝率12.2%/連対率20.4%/複勝率30.6%/単回収率62%/複回収率95%
※過去10年
また、JRAのダート重賞は“前走重賞組が強い”というのが共通の傾向。2024年のJRA重賞139レースのうち、芝競走が114レースでダート競走は15レース、そして障害競走が10レース。ダート路線は地方交流重賞と分散してはいるものの、出走可能頭数を考えれば重賞に出走するハードル自体が芝とは比べ物にならないほど高いことがわかります。
そのため、JRAのダート重賞は安定してレベルの高いメンバーが集まりやすく、レース格と実力が相関しやすいというわけです。
<前走JRA重賞組の距離別成績>
・距離延長【2-1-0-20】
勝率8.7%/連対率13.0%/複勝率13.0%/単回収率29%/複回収率20%
・同距離【0-0-0-3】
勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率0.0%/単回収率0%/複回収率0%
・距離短縮【6-3-4-21】
勝率17.6%/連対率26.5%/複勝率38.2%/単回収率90%/複回収率124%
※過去10年
血統面ではフォーティナイナーやStorm Catといった北米のスピード血統が有力です。後半の持続力が重要とはいえ、それはダート1400m戦での相対的な特徴。ダート短距離戦のペースに対応できるスピードと中距離指向の末脚の両方が必要なため、スピード血統ながらマイル以上でも実績を残す馬が理想型といえるでしょう。
実際、2016年の勝ち馬モーニンはフォーティナイナーとStorm Catの両方の血を有していたほか、モーニンを含めた過去10年の勝ち馬のうち9頭はフォーティナイナーかStorm Catの血を3代以内に内包していました。
<血統別成績(単勝オッズ19.9倍以下)>
・フォーティナイナー内包馬【4-1-1-5】
勝率36.4%/連対率45.5%/複勝率54.5%/単回収率247%/複回収率125%
・Storm Cat内包馬【6-0-3-10】
勝率31.6%/連対率31.6%/複勝率47.4%/単回収率116%/複回収率80%
※過去10年
有力馬の血統解説
・フリームファクシ
母母ソニンクに遡る名牝系に属し、本馬の半姉には日英のGⅠを制したディアドラ(2017年秋華賞、2019年ナッソーS)などがいる良血。ルーラーシップ産駒の本馬も2023年にきさらぎ賞を制し、皐月賞でも上位評価を集めた素質馬です。ただ、本馬は繋の立った足元からダート適性も高く、ダート1400m戦では2戦2勝。芝指向の強い血統構成で配合面は評価できませんが、素質の高さはメンバー中屈指の一頭です。
・コスタノヴァ
母カラフルブラッサムの半兄にはピイラニハイウェイ(2012年佐賀記念、浦和記念)がおり、母自身も芝1800~2000mで3勝を挙げた中距離馬。ロードカナロア(母父Storm Cat)産駒の本馬はピッチの利いたマイラー体型に出ており、幅広い舞台で能力を発揮できる優等生タイプです。マイル指向が強い分、ダート1400m戦では東京の舞台がピッタリでしょう。適条件ではない1200m戦での敗戦後となる今回は狙い目の一頭です。
・ドンフランキー
母ウィーミスフランキーは米GⅠ2勝馬で、ダイワメジャー産駒の本馬は馬体重600kg前後という巨漢馬。1~2番手で揉まれない競馬がベストですが、マイペースなら1400m戦でも押し切れる底力は備えています。母母Starinthemeadowが強烈に北米のスピード血脈を刺激した配合形で、超大型馬ではあるもののスピードで押し切れる軽い馬場がベストでしょうか。
ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。2023年11月には本島修司氏との共同執筆で『競馬の最高戦略書 予想生産性を上げる人の取捨選択の技術』(主婦の友社)を出版。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
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