【金鯱賞】近8年は1番人気が「複勝率100%」と堅実 “穴馬の資格”持つ6歳ライラックに注意
勝木淳

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2番人気以内7勝、実績重視
尾張名古屋のシンボルは名古屋城の天守にそそり立つ金の鯱。現在の位置にある名古屋城は、徳川家康が豊臣方ににらみを利かせる意味で創建を命じた。その当初から金の鯱は天守に飾られ、家康の支配力や尾張徳川家の権威の象徴という意味合いがあった。
そんな鯱は明治になり、名古屋城取り壊しが一旦決まったため、天守から降ろされ、東京へ送られた。だが、一転して名古屋城保存が決まり、鯱も名古屋へ帰った。以降、名古屋のシンボルとして光り続ける。
金鯱賞は大阪杯のステップレースとして2017年から3月に移された。いざ、大阪を見据える。名古屋城創建当初の目論見に重なるではないか。ここからは、当レースが3月に移設された2017年以降(過去8回)のデータを使用してデータ分析を行っていく。
人気別成績では、1番人気【5-2-1-0】勝率62.5%、複勝率100%、2番人気【2-1-1-4】勝率25.0%、複勝率50.0%と、GⅠ目前の中距離GⅡらしく上位人気は崩れない。基本、波乱なしだが、21年に10番人気1着だったギベオンのインパクトが大きい。とはいえ、2着は断然人気だったデアリングタクト。牝馬三冠馬の4歳初戦として注目を集めた。
ほか、6番人気【0-0-4-4】複勝率50.0%など、8番人気以内なら馬券圏内もある。きっちり上位人気を軸に、中穴を仕留めたい。
年齢別では、4歳が【4-4-1-15】勝率16.7%、複勝率37.5%と中心。このうち3勝は2、3歳GⅠ馬かダービー2着馬であり、残る1勝は晩成型のジャックドールだった。基本は実績馬が頼りになる。
5歳は【2-3-3-22】勝率6.7%、複勝率26.7%、6歳は【2-0-4-20】勝率7.7%、複勝率23.1%と続くが、注目は穴馬の好走が多い6歳だろう。6番人気以下【1-0-4-16】複勝率23.8%とギベオンを筆頭に穴をあける。
6歳でもライラックは買い
今年は有馬記念11着プログノーシス、中日新聞杯を勝ったデシエルト、チャレンジC勝ちのラヴェルあたりが中心を担う。GⅠ馬の姿がなく、少し手薄な組み合わせであり、例年のような堅い決着になるかどうか。きっちり傾向をつかみ、モノにしたいところだ。
前走クラス別では当然、前走GⅠが【4-2-1-15】勝率18.2%、複勝率31.8%と強力で、GⅠ以来の休み明けとなる面々が期待に応える。前走有馬記念は【3-0-1-9】勝率23.1%、複勝率30.8%と信頼できるが、4着以内が【3-0-0-0】で、10着以下だと【0-0-0-7】。3連覇がかかるプログノーシスにとって厳しいデータだ。
前走GⅡが【0-0-1-20】複勝率4.8%と振るわず、AJCCは【0-0-0-7】とライラックにとっても厳しい。本来は格重視の重賞だが、今年に限っては通用しない予感がする。
であれば、前走GⅢ【1-3-2-24】勝率3.3%、複勝率20.0%にも目を配ろう。内訳では同舞台の中日新聞杯【1-1-0-4】勝率16.7%、複勝率33.3%、同距離の中山金杯が【0-1-1-4】。チャレンジCも【0-0-1-3】複勝率25.0%だが、昨年の舞台は本来の阪神ではなく、平坦の京都だった。これがどう影響するのか。ラヴェルには気になるところだ。
中日新聞杯は4、5着が【1-1-0-0】に対し、1着は【0-0-0-3】。不思議なことに同舞台でも連続好走がなく、むしろ負けた組が巻き返す。連勝中のデシエルトもデータ上は微妙になってしまう。
チャンレジC1着経由は【0-0-1-1】。ラヴェルはそれほど悪くない。といっても、メンバーレベルを考えれば、デシエルトもラヴェルも十分買える。サンプルの少ないデータに振り回されず、判断したいところだ。
デシエルトが制した昨年の中日新聞杯は、前後半1000m通過58.8-59.6。中盤で11秒台が続く、全体的にラップの落ち込みが少ない競馬で、デシエルトのしぶとさが際立った。2馬身差の2着ロードデルレイは次走で日経新春杯を圧勝。再度、愚直に厳しめのペースを刻めば、好走していい。
ラヴェルが勝った昨年のチャレンジCも前後半1000m58.4-59.8と中日新聞杯に近い持続力勝負に。馬群でじっとしたラヴェルは勝負所で巧みに馬群をさばき、直線で一気に抜けた。ラスト2Fは11.6-11.8。2、3着が追い込み勢だったことを踏まえると、相当強い競馬だった。姉ナミュールも4歳秋に覚醒しており、この春はラヴェルにとって勝負のシーズンだ。
年齢データで触れた「6歳の穴馬」について、前走着順を見る。前走5着【2-0-0-1】勝率、複勝率66.7%など狙い目は9着以内。10着以下は【0-0-0-6】なので、二桁大敗でなければチャンスはある。
前走AJCC組の不振は気になるが、ライラックは前走5着で好データに該当する。良いデータと悪いデータが引っ張り合っているが、今年のメンバーなら買ってみてもいい。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『オルフェーヴル伝説 世界を驚かせた金色の暴君』(星海社新書)に寄稿。
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