【根岸S回顧】コスタノヴァが重賞初V ロードカナロア産駒のワンツー決着、東京1400では要チェック

勝木淳

2025年根岸ステークス、レース結果,ⒸSPAIA

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東京ダートの攻略法

2025年2月2日に東京競馬場で開催された根岸ステークスは、コスタノヴァが圧巻のパフォーマンスで重賞タイトルを奪取した。

2025年の東京競馬が開幕。日本一の規模を誇る東京競馬場は、なにもかも他場とは一線を画す。あまりに規模が違うせいで、他場とはまるで違う独自のコースゆえ、適性がないと攻略できない。東京巧者とそうでない馬の差は実力差以上に大きく、東京はリピーターが多い。

根岸Sのダート1400mも、他場の1400mとは異なる。京都、阪神、中京のスタートは芝コースにあるが、東京は周回コースの途中であり、スタートもダートから。

そして、ラストは501.6mの直線勝負。当然ダートであっても上がりは速く、少し時計を要する芝レベルのタイムで駆け抜けられないと勝負にならない。時計がかかる勝負であっても、重賞なら35秒台で上がれないと上位進出はない。

東京はダートも速い。東京を得意とする馬のなかには東京以外ではあっさり負ける、いわゆる“東京専用”が多い。根岸Sで4馬身差圧勝のコスタノヴァはその典型だ。

条件戦から勝ちあがっていくと、オープンまでは4勝しないといけないが、コスタノヴァはオープン勝ちを含め5勝をあげ、そのうち4勝が東京ダート。東京以外は未勝利戦だけだ。

根岸Sを勝ち、これで5戦全勝。見事なまでの東京専用だけに、ここは重賞制覇の願ってもない好機だった。コスタノヴァにとって大きな一勝でもある。

ちなみに、2着ロードフォンスも全5勝中3勝が東京と占有率が高かった。似たプロフィールは競走中止のタガノビューティー(8勝中5勝)とメイショウテンスイ(5勝中3勝)の2頭。どちらも8歳であり、主力の4~5歳は1、2着馬だけ。東京の勝利数だけではなく、全勝利数における東京の占める割合まで掘り下げるのは、東京では特に有効な武器になる。

さらに、2頭はどちらもロードカナロア産駒。2020~24年までの5年間、東京ダート1400mのロードカナロア産駒は【23-23-17-147】勝率11.0%、複勝率30.0%の好成績で、根岸Sは今年も含めて通算3勝と滅法得意だ。

とくに3勝クラスやオープンの勝率が高く、クラスが上昇するほど強さをみせる。全23勝のうち母の父サンデーサイレンス系が15勝で、勝ち馬と2着馬はどちらも当てはまる。このコースでロードカナロア×サンデー系は迷わず買おう。

余談だが、東京なら芝1400mも【29-22-18-158】勝率12.8%、複勝率30.4%で単勝回収率も129%と非常に優秀。こちらもクラス上昇とともに勝率もあがる。東京1400mは芝もダートもロードカナロア。この格言だけでも東京開催は乗りきれる。


中2週の出走はあるか

レースは発馬でタガノビューティーが落馬競走中止。先手をとったのはドンフランキーだった。604kgの巨漢馬が鋭くダッシュを効かせるも、アームズレインやサンライズフレイムが追いかけ、思うように振り切れない。

促しながら振り切りにいき、前半600mは33.9。さらに1ハロン11.8を記録し、息を入れる場面がなかった。半マイルは45.7。根岸Sでは2018年と並ぶ最速記録であり、当時はノンコノユメの追い込みが決まった。

当然、今年も最後は後方待機策の出番。それを中団から伸びて圧勝したコスタノヴァは充実期にあるといえる。3着アルファマムの競馬になってもおかしくなかったが、東京巧者の1着、2着馬が上だった。

コスタノヴァはこれまでC.ルメール騎手が6戦連続で騎乗し、【4-1-0-1】という成績。条件戦から東京での勝ちパターンを叩き込んできた。

直線が長くても上がりがかからない東京では、前半から我慢してでも流れに乗らないと勝てない。この日の位置取りはまさにセオリー通りで、飛ばす先行集団の直後にいた。

溜めすぎず行きすぎず、いつも勝負圏内にいる。ルメール騎手の流儀そのものであり、代打騎乗の横山武史騎手は見事にそれを踏襲した。

もちろん、フェブラリーステークスも射程圏内に入ってきたが、中2週でのGⅠ挑戦は引っかかる。これまでは最低でも中9週とじっくり調整しており、陣営のジャッジはどう出るか。あくまで状態次第だが、よほど上昇気配でないと使わないのではないか。


相手が悪かったアルファマム

2着ロードフォンスは勝ち馬の2列後ろからレースを進め、序盤は砂を被って行きたがるような仕草もあったが、3コーナーできっちり外に持ち出すと、走りもスムーズに。

だが、直線入り口でカラ馬とバルサムノートの間に入ってしまい、そこで一瞬遅れたのは痛かった。外に切り返すと再加速しており、スムーズなら4馬身も差はなかったはずだ。

3着アルファマムは全7勝中東京では2勝。1、2着とは東京適性で差があった。それでも展開はどんぴしゃり。上がり最速35.7で届かなかったのは相手が悪かったとしかいえない。1400mの追い込み型で、ハイペースの際は必ず押さえないといけない馬だ。

1番人気フリームファクシは6着。根岸S過去10年で年明け出走馬は【0-0-2-31】という不吉なデータにはまった印象もあるが、道中、特に3コーナーでカラ馬に張られ、かなり外を回り、脚を使ってしまった。データもあったが、ツキがなかったのもある。

ただ、ダート転身後にみせたような先行力がなかったのはメンバーレベルが一段上がったからで、重賞通用はもう少し経験が必要だろう。


2025年根岸S、レース回顧,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『アイドルホース列伝 超 1949-2024』(星海社新書)に寄稿。

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